易しい「容器と個数」系の問題について、真面目に掛け算の順序を固定することを考える。
例題1
10個のケースに10個の箱が入っており、それぞれの箱には10個のボールが入っている。ボールの総数は何個か。
この問題について素直に式を書くと、
しかし、これだと各数が同数であるため、順序固定派の考え方に基づく、数の区別ができていない。区別するために単位(助数詞)を書き加える。
単位(助数詞)が同じであるため、順序固定派の考え方に基づく、数の区別ができていない。区別するために対象の属性を書き加える。
これで区別できているという意味において「正しい式」になったように見える。しかし、先頭の(ボール)と等号の後の(ボール)が意味するところは異なる。前者は一箱あたりのボールの数で、後者は単にボールの数であると考えられる。従ってこれらを区別するために、形式的分数表記を採用する。
さて、順序固定派によれば、これらは非可換であるから、この計算は区別された自然数の3つの順序対の集合、すなわち直積から区別された自然数への写像であるとみなすことができる。つまり順序固定派は、物理的な意味で ボール ∈ 箱 ∈ ケース という設定である時、
という写像 f について議論をしていると考えることができる。つまり、掛け算の順序に関する立式の問題は、素朴に同値類として解釈せず、このような写像 f の形式を意識せよという課題であるといえよう。
例題2
10個の箱に10個の箱が入っている。後者の箱に10個の箱が入っている。前文の後者の箱の総数は何個か。
こうなると、単位(助数詞)も対象の属性でも区別できない。よって、式を立てる前に自主的に箱を区別しなくてはならない。箱を小・中・大に分類し、物理的な意味で 小∈中∈大 であることを明言し、
という形で
なる写像 f を表現できる。
ところで、全ての箱の総数を聞かれた場合、
つまり
となる気がするが、足し算の順序が正しいかまでは自信がない。箱の間に同値関係を入れるタイミングも自信がない。操作者の視界に入る順序にはしてある。
容器と個数の問題ですら
掛け算の順序を明確にすることは、そこそこ面倒である。
単位や対象の属性が複雑化すれば、区別された自然数の直積の順序を、どう問題設定に対応させるかという規則はさらに複雑化する。
こういう話を正確に理解するのは、小学校の算数全般を理解するより大分難しそうで、それでいてしょうもない話で、理解したところで特にメリットもないので、算数教育でこんなことを考える意味はあまりなさそうである。